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往生際
2014.11.10 Monday
しかし凄いタイトルの本だね。
ソニーミュージック・エンタテイメントの会長だったりした丸山茂雄さんが、食道がんで余命4か月という宣告を受けて語り下ろした本で、随所にザ・モッズの話も出てくる。
ぼくにとっては、ザ・モッズがデビューしたころからいつもバックステージで見かける若白髪の人物だった。会釈をする程度だったけど、あるパーティで話をするチャンスができたのでずっと聞きたかった質問をした。
「丸山さんはモッズのどこが好きなんですか?」
丸山さんは下を向いて真剣な顔で一分間ほど黙った末、こう答えた。
「唯一、無二の、バンドだから」
モッズって、なんて幸せなバンドなんだろう、と思ったものだ。
この本を送ってくれた森山達也はメモをはさんでいて、ぼくの体も心配していた。
「言葉はいっぱいあるんですが、今は信じて祈ってます。よければ、ボッとしてる時間があったらこの本でもと思って。また会える日を楽しみにしています」
丸山さんは「余命宣告」の期限は乗り切り、今は丸山ワクチンを使っているようだ。あのワクチンを作った丸山千里博士はお父上なのだ。
ザ・モッズは森山が体を痛めたため、すべてのライブ・ツアーをキャンセル中なのだけど、12月25日に東京で一度だけライブをやることを決めた。
丸山茂雄さんは必ず会場にいると思う。
森山達也のために
2014.03.10 Monday
ザ・モッズというバンドが30年以上もツアーとアルバムの発表を続けてきた、世界にも稀なロックバンドであることは、ここでも再三書いてきた。
そのモッズの最新アルバムが『ROCKTIONARY』だ。ロック辞典とでも訳すのかな。
とは言ってもロック史上の名曲をカバーしたものではない。
すべてモッズのオリジナル曲。でもロックが好きでロックを聴きこんできた人たちなら、なぜロック辞典と名づけられたのかがよくわかると思う。
名演奏による名盤だ。
しかし発表と同時にスタートするはずだったツアーがすべて突然キャンセルされた。
リーダーの森山達也が病に倒れたのだ。
脊髄終糸症候群。
30年以上ぼくたちに元気をくれ続けてきた彼が倒れるなんて。
モッズファンたちの間に動揺が走っている。
3.11の数日後、ぼくはこのブログに「祈ろう」と題したメッセージを書いた。
それを読んだ森山達也はメッセージを英訳してプリントしたTシャツその他を作り、東北への義援を続けてくれた。
あのときと同じメッセージを、今度は森山達也の復活を願う言葉として再録したい。
それが誰であれ、それが何であれ、
あなたが信じる神さまに祈ろう。
ザ・モッズ/ロックは不謹慎なもの
2012.06.23 Saturday
1968年のメキシコ・オリンピックのことだ。
200m走に出て、世界新記録で金メダルをとったトミー・スミスと銅メダルのジョン・カーロスは表彰台に立って、掲揚される星条旗に向けて黒い手袋をしたこぶしを突き立てた。
アメリカ合衆国の人種差別政策に対する、命懸けの抗議だった。マーティン・ルーサー・キング牧師が暗殺されて間もないころでもあった。
ふたりはアメリカ選手村から追放され、オリンピック委員会からも追放された。しかし時間がたつと大学で教えるようになり、やがて黒人解放運動の英雄に数えられるようになった。
今年で結成31年を迎える日本のロックバンド、モッズはデビュー当時からずっと、このトミー・スミスのシルエットをバンドのロゴマークに使ってきた。
モッズというのは、そんなバンドだ。
モッズの新しいDVDが出た。
ぼくも日記に書いたが昨年12月の渋谷でのライブ。随所にバンドメンバーへのインタビューが多く収められていて、それが滅法おもしろい。ひとつだけ紹介しよう。昨年3月の震災、原発事故の翌日、モッズは名古屋でライブをやった。
俺はやるべきだと思った。
結果非難もあったとはあとで小耳に入ってきた。
不謹慎だとか、やっとる場合じゃないとか。
まあ、不謹慎だと言われれば、
存在自体が不謹慎だからね、ロックなんてね。
------ 北里晃一
かっこいいよね。ロックは不謹慎なもの。慎みなんて無縁なんだ。
ライブの一曲目で森山達也は、こう歌っている。
今、世界が転がりだしているのさ
だけどこの国だけが目をそらす
------ "TIME"
中道的な価値観の中におさまっていない。かと言ってパンク・ノスタルジーにひたってるわけでもない。31年間音楽的な進化は続けたが、今もいかさまな世界のシステムを罵倒し、しがないガレージロックバンドの苦悩を歌っている。
チェッカーズ、ブルーハーツ、福山雅治らモッズの影響で音楽をはじめた人たちは多く、それぞれいい歌を提供してくれたけど、どうしてもモッズに追いつき追い越せないものがあった。それが何なのかが少しわかったような気がするDVDだった。
モッズについての日記も増えてきたので、サイドバーのカテゴリーに<Mods>を追加しました。
ザ・モッズと博多ラーメン
2011.12.24 Saturday
12月21日は、モッズのコンサートで渋谷AXに出かけた。
このブログから生まれたメッセージ、
が背景に大きく掲げられていた。
前回の日記のタイトルにした『崩れ落ちる前に』も聴かせてもらえた。
超満員の聴衆。こんな幸せなライブもめったにない。
Photo by Hitoshi Hasebe
ライブのあと、メンバーとも会話ができた。ベースの北里晃一に、
「ブログ読んでますよ。昨日の日記は漢字を間違えとったでしょ」
と言われた。金正日と書くべきところを、金成日と書いていたらしい。
(その後訂正しました)インテリのキーコは見逃してくれないね :-)
帰途、一緒に出かけていた写真家の長谷部均に誘われた。
「ラーメンでも食べていきませんか、環八にうまい店がありますから」
驚いたことにそこは博多長浜ラーメンだった。
長谷部は何も知らずに誘ってくれたので、思い出話をした。
30年ほど前に雑誌の仕事で、ぼくはザ・モッズの九州ツアーを同行取材した。
そのとき生まれて初めて食べたのが博多長浜ラーメンだった。東京には博多ラーメンなんてほとんどなかった時代だ。
信じられないほどうまかった。
ぼくには九州の血が流れていることを初めて実感した日だった。
その日一日だけで、3回もラーメンを食べに行ったほどだ。
環八の長浜もうまかった。
日本で、世界で、そしてぼく個人的にもとんでもない2011年だったけど、最後の最後をモッズのライブと博多ラーメンで締められたのは、最高だった。
「今日はTwo Punksをやらなかったね」という話にもなった。
モッズファンたちの間の聖歌だ。今年東京での最後のライブでTwo Punksを聴けずに、後ろ髪を引かれる思いで帰った人も多かったのではないだろうか。
ロックの歴史で名曲に数えられる歌は、意識的であれ無意識的であれ、実際の体験に基づいて作られた歌が多い。Two Punksも例外ではない。
70年代、故郷博多の他のバンドが次々に上京していく中、さまざまな事情でモッズは博多に取り残されたままだった。Two Punksとは、森山達也と北里晃一のことだ。
聴きたくても聴けなかった人たちのために、まだ一度も聴いたことがない人たちのために、Two PunksをYouTubeで探しました。
メリー・クリスマス。
崩れ落ちる前に
2011.12.20 Tuesday
3.11直後のこのブログに書いたメッセージで、ザ・モッズがチャリティTシャツを作ってくれた。今度は同じメッセージでタオルを作って送ってきてくれた。
「長く続けます」という約束を守ってくれているようだ。
3.11以降、すべてが崩壊し始めた2011年だった。
昨日は金正日が亡くなったというニュースが入った。
ビンラディンが殺され、カダフィが殺されたのと同じ年のできごとだ。金正日も殺されたんじゃないか、という疑いの声が聞こえてきてもおかしくないのにね。
明日21日は渋谷までザ・モッズのライブに出かけることにした。ぼく個人にとっても、とんでもないことが次々と起きた一年だったし、元気をもらってこよう。
ザ・モッズのデビュー曲を、デビュー当時の映像で見てください。
ザ・モッズのTシャツ
2011.05.07 Saturday
大震災の数日後、このブログで「祈ろう」という短いメッセージを書いた。
それが誰であれ、それが何であれ、
あなたが信じる神さまに祈ろう。
これを読んだザ・モッズの森山達也から電話があった。チャリティTシャツに使わせてほしいということだった。できれば英訳してほしいとのことだったので、デーブ・スペクターに頼んでシンプルな英文にしてもらった。
ザ・モッズは今年結成30周年のツアーを続けている。
30年にもわたってピュアな(嘘のない)ロックバンドとしての旅を続けている。
大好きなバンドだ。
ライブ会場でこのTシャツを見かけたら、購入(義援)をお願いします。
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追記(5/25/11)
このところ「森山達也 病気」みたいな検索キーワードでこのブログにやってくる人たちが増えている。森やんが体調を崩していくつかのライブをキャンセルしたのを心配したモッズ・ファンたちだと思う。
森やんとメールのやりとりをしましたが、元気でしたよ。
日比谷野音で会いましょう、と約束しました。
-----------
追・追記(6/8/11)
先ほど森やんと電話で話しました。
大変ではあるけど日比谷に向けて15日からリハーサルを始めるということです。
みんなで恢復を祈りましょう。
SPEAKEASY/THE MODS
2009.05.20 Wednesday
禁酒法時代の「もぐり酒場」のことだ。
ステージには絨毯が敷かれていて、バーカウンターがある。
ストゥールに座った森山達也がアコースティック・ギターで一曲めを歌いはじめる。声帯にそれなりの年輪を重ねてはいるけど、昔と変わらない甘く美しい声だ。
曲は、"Destruction Baby"
彼は「破壊しよう」と呼びかける。
30年近く前にデビューした歌でも「崩れ落ちる前に、崩せ」と歌っていた。
一貫している。ロックンロールとは、闘いの音楽なのだ。
すでに打ちのめされている子どもたちをさらに打ちのめそうとするシステム。裏に隠れてイカサマやゴマカシを続けているシステム。
破壊しなければならないものは、いっこうになくならない。
もぐり酒場のハウスバンドであるモッズに、キーボードやサックスが加わっていく。
モッズ・ファンの永遠の聖歌『トゥーパンクス』の途中で森山が語る。
「今日は雨の中、不況の中、駆けつけてくれてありがとう」
闘い続けるのに危険がつきものなのは承知の上。
でも警戒心だけは忘れないように。
禁酒法時代のスピークイージー(もぐり酒場)の多くは、ドアをノックして合い言葉(パスワード)を言えた者だけが中に入れたという。
昨年12月に渋谷で開かれたこのもぐり酒場に、ぼくは残念ながら参加できなかった。
もし参加していて、もし入り口で合い言葉を求められたら、ぼくはこう応えたと思う。
"Let It Rock."
これでいいよね、森やん。
なんてこったろう。この日記を書き始めたばかりのところで電話があった。
かつてレコード会社でモッズを担当していた会田晃さんが急逝したということだ。
詳しいことは何もまだわからない。
会田さんはこの森にもたびたび遊びにきてくれた元気な人だった。
なんてこったろう。
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本名・長野眞
フライ・コミュニケーションズ代表
1948年生まれ。1971年上智大学を卒業後、新聞記者、コピーライターの仕事を経験し、シカゴに留学。帰国後「日本国憲法」(小学館)を共同編集したことで本を作る楽しさを知り、北山耕平とともにフライ・コミュニケーションズを設立。斬新でユニークなアイデアと感性で、数多くの作品を企画、編集、執筆する。2009年世界にたった一冊の本をつくる「ニュー・グリーティングブックス」のHPを開設。10年間横浜の小さな森の中で自然とともに暮らし、現在は鎌倉の海辺で閑かな日々を過ごしている。
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