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熾きができるまで
2012.01.12 Thursday
このブログでは以前にも『焚き火』という日記を書いたことがある。
10年前にこの森で焚き火をはじめたころ、年長の先輩たちが口々に「燃やしはじめは厄介だけど、熾(お)きができれば楽になるよ」と教えてくれた。
その熾きというのが何だかさっぱりわからなかった。
どうやら炎のエネルギーがある臨界点に達して、そこから先は剪定したばかりの太い生木でも平気で燃やしはじめる。理屈としてはそういうことらしいのだけど、感覚としてはまったくわからないでいた。
ずいぶん月日がたったある日「あっ、今、熾きができた」とわかったのだ。
理屈ではなく、アニマルとして本来持っていた感覚が甦ったような瞬間だった。
「熾き」を知ってからは炎といいコミュニケーションがとれるようになった。
熾きができるまでは大変。仕事であれ恋愛であれ、同じだね。
引っ越しに備えて木製の本棚を分解して、焚き火にした。
この森であと何回焚き火ができるかわからないので、写真に撮っておくことにした。夜明け前に燃やしはじめて、終わるころには明るくなっていた。背景に、無惨に切られてしまった木々の一部が写っていた。
好きだったステッカーを昔本棚の横に貼っておいたのだけど、それも一緒に炎に包まれていった。
THERE'S NO GOVERNMENT
LIKE NO GOVERNMENT
無政府ほどいい政府は他には無い
昔好きだったメッセージだが、今でも(今だからこそ)心に響くね。
近く森を出たら、新しい土地での生活が始まる。
熾きができるまでは、大変かもしれないな。
森を出ていこう
2011.11.01 Tuesday
この数カ月のブログを読んでくれていた人たちには、ある程度予感があったでしょう。
この森を出ていく決心をかためました。
でもまだどこに転居するのかは全然決まっていません。
森から出ることだけ決めて「行き先を決めていない赤トンボ」状態です :-)
そこで。
自分でも探しはじめていますが、ブログを読んでくれているみなさんからも何か「いい情報」をいただけると、うれしいです。
さしあたっては転居先の地域を限定せず、日本各地どこでも(場合によっては海外でも)広く情報を収集したいです。
独り暮らし、できれば「眺めのいい部屋、家」が希望です。
ページの下でコメントをいただけませんか?
公開されたくない情報の場合「非公開希望」としてくれれば、公開しません。
連絡先を書いておいてください。
こちらからご連絡さしあげます。
しかしいくら遅くても12月中旬までには転居先を決めたいです。
ご協力よろしくお願いします。
「森の日記」でなくなっても「海の日記」とか「町の日記」とか「山の日記」になってでも、ブログは続けるつもりでいます。
眺めのいい部屋だった
2011.10.16 Sunday
こないだは『アップル・マニフェスト』を読みに大挙して訪問者があったが、今日は7月末に書いた日記『森はまだ生きているのだろうか』を読みにくる人たちがたくさんいる。
どこかで話題になっているのだろうね。
今日もこの森について書いておきたい。
この半年間に起きた、もうひとつの悲しいニュースだ。
ブログのトップ写真に使っているサンルームの写真は3,4年前に撮ったもの。
実は窓からの眺めは今はもうすっかり変わってしまった。
10年間、コナラを中心とした巨木に囲まれて生きてきた。「平和とは大きな木の下のシェルターのこと」という教えそのままの暮らしだった。
その巨木の多くが、切られてしまったのだ。
ぼくよりはるかに年長の巨木たちだ。
都会から森がどのようにして消えていくのかを、日々窓から目撃している。
『森はまだ生きているのだろうか』でぼくはこう書いた。
昔教わった生態学の基礎の基礎はこうだった。
「虫や鳥や木が消え始めたら、次は人間が消えていく番だ」
どうやらぼくも遠くない時期にこの森を離れることになりそうだ。
次をどうするかなんて、まだ何も決まってないけど。
よく晴れた日に巨木たちを見上げ、チラチラときらめく木漏れ日を見ながら考えごとをするのが好きだった。ブッダも菩提樹の下でこんな木漏れ日を見ていたんだろうね。
この写真は数年前、光を虹化するレンズで撮ったもの。
ぼくの目に木漏れ日がこう見えているわけじゃありません :-)
森の小径があった
2011.10.12 Wednesday
前回の日記で体調がよくないことを書いたら、多くの人たちからお見舞いや心配の声をいただきました。メールやメッセージ、あるいはtwitterやmixiやfacebookで。数が多すぎてどなたにもご返事をさしあげていません。ごめんなさい。
ぼくのことを子どものころからよく知っているある方は、ブログを読んで驚き、大量の食料品を送ってくれました。みなさん、どうもありがとう。
とても励まされました。
ゆっくりと体力を回復させていくつもりです。
「悲しいことやトラブル」が何か、を聞いてきた人も少なからずありました。
今日はこの半年間に起きた悲しいことをひとつだけ書いておきます。
ぼくの家にきたことがある人は、駐車場から玄関まで木々の間を抜けてくる小径があったのをおぼえてらっしゃると思います。
あの小径が消滅したんです。木々も全部。
桜、梅、柿、茶、しだれ桜、タラ、みかん、銀杏などなど。
木々の剪定は木の種類、剪定の目的によって時期が異なるので、季節季節にそれぞれの木に登ってノコやチェーンソーで枝を落としていたため、一本一本の木に思い出があります。
夏の暑い日に熱中症で倒れたこともありました。
10年間家族同様に生きてきた木々がいっぺんに消えてしまったのはショックでした。
マンションが建つことになったようです。
もちろん大家さん(地主さん)には当然の事情とやむをえない思いがあってのことだし、ぼくが口をはさめるようなことではありません。
伐採の現場は見ていません。おそらく土木工事の人たちが重機を使って(なんの感慨もなんの祈りもなく)根こそぎ切り倒し、運び去ったのでしょう。
やる瀬ない思いです。
写真は秋がくるたびに楽しみをくれていた紅葉と金木犀の花。
この二本の木も今はもうありません。
どじょうは金魚のエサが好きだ
2011.09.07 Wednesday
池で金魚を飼っていた。エサをやるのが日課だった。
どじょうを飼うといいよ、と勧めてくれた人がいた。
池底の泥をきれいにしてくれるから、というのだ。
3匹のどじょうを買ってきて、池に放した。
それっきりどじょうたちはほとんど姿を見せなかった。きっと池底で泥を食べて泥をきれいにするのに忙しくしていたんだと思う。
何年もたってから、金魚にエサをやるときにどじょうたちも水面にふわりふわりと浮かび上がってくるようになった。一緒にエサを食べるようになった。
3匹だったどじょうはいつのまにか5,6匹に増えていて、大きく育っていた。
金魚のエサの味をおぼえてしまったんだね。
世の中には、泥よりおいしいものがあったんだ!
今度総理になった人はこう語ったそうだ。
どじょうは金魚にはなれない。当然だ。
今日ぼくが言いたかったのは、
どじょうは金魚のエサが好きだ、ということ。
なんの哲学もない。ただの個人的な観察結果です :-)
河津桜 春一番
2011.03.01 Tuesday
近所のホームセンターで4,5年前、河津桜の苗木を売っていた。
「横浜でも咲くの?」と聞いたら「咲きますよ」と店員さんが教えてくれた。伊豆下田のような土地でしか咲かない桜だとばかり思っていたからだ。
買ってきて長老と一緒に植えたときは背丈が1mもなかった。
でも翌年の春には数輪の花を咲かせた。
その後も去年までは「数輪だけの花見」をしていたのだけど、今年ついにたくさんの花を咲かせてくれた。背丈も見上げるほどに成長した。
河津桜はピンクの色も濃いし、花も長持ちする。
なによりもいち早く春の到来を教えてくれるのがいい。
こうやって日本中どこででも咲くのなら、いつかは染井吉野の人気にとってかわるような気がしてならない。
猛暑の夏の抜け殻
2010.12.20 Monday
庭の草刈りをしていたら、木陰の草むらの中にこんな可愛い光景を見つけ、カメラを取りに行った。二本並んだ草の葉っぱの上に、一個ずつセミの抜け殻が乗っていた。
今年の夏の暑さは半端じゃなかった。
たぶんそのせいでセミの数が少なく、異様なほど静かな夏だった。ぼくだって外出するのがいやだったほどだから、セミの幼虫たちも地上に出るのがいやだったんじゃないだろうか。
そんな暑い夜に、地中でなかよしだった二匹が勇気をふるって一緒に外に出て、並んだ葉っぱの上で羽化し、夜明けのころに一緒に飛び立っていった。
そんな想像をさせてくれる光景だった。
ちょっとつまんでひっくり返し、雌雄を確認してみたい欲求もあったけど、さわらずにそのままにしておくことにした。
自然がときどき見せてくれる、小さな神秘だ。
ブラリひょうたん
2010.09.15 Wednesday
子どものころ夏休みに従兄弟とふたりで、逗子のある家で過ごした。
留守番を頼まれたのだ。海に近いから、海水浴もできた。
そこは脚本家の住まいだったので、面白そうな本が本棚にあふれていた。
その中からぼくは『ブラリひょうたん』というのんきで気がぬけたようなタイトルの本を選び、読みはじめ、読みふけった。
めちゃくちゃに面白い本だった。
戦後間もないころに、高田保という人が東京日日新聞に書いたコラムを集めた本だ。
ネット上に一部が掲載されていたので、懐しく読んでみた。
いま読んでもめちゃくちゃに面白い。
まったく古びてない。
政治や選挙や演説についてのコラムなんて、まるで昨日今日の日本のできごとを語っているようで、むしろ新鮮だ。
写真は、縄文庵の長老がたいせつに育てているひょうたん。
猛暑の夏に40cmにまで成長した。
今はようやく吹きはじめた初秋の風にブラリブラリと揺れている。
ホドラーの『樵夫』
2010.09.01 Wednesday
高校の3年間を、父の仕事があってぼくは倉敷で過ごした。
午後の授業を抜け出して、よく大原美術館で時間をつぶした。
2階の角にあった(スイスの画家)フェルディナント・ホドラーの『樵夫(きこり)』が好きだった。まだ倉敷には新幹線がきてなくて観光客も少なかったし、あの部屋には警備員もいなかった。
いつも誰もいない部屋のソファに座って、ホドラーの「シャキッとした」「ひと際かっこいい」樵夫の絵を眺めていた。絵の前でうつらうつらと眠ったこともあった。
まだ脳細胞が若くてやわらかい頃に、絵に夢中になるとしたら、そこに何が描かれているかに十分に注意した方がいい。
あれから何十年もたって、この森にやってきてある日、ぼくは自分があの樵夫のような日々を過ごしていることに気がついたのだ :-)
大きな斧を振り上げて木の切り口に叩き込むなんて技術や体力はないので、もっぱらチェーンソーに頼っている樵夫だけどね。
少し前にアンリ・ルソーの『夢』について書いたが、『樵夫』もあの絵と同じ1910年に描かれている。今年で生誕100年になる絵だ。
今、世田谷美術館で開かれている「ヨーロピアン・モダン」の展覧会に、ホドラーの絵も何点かきているらしい。行ってみたい。
ホドラー展を日本で開くという企画があるという噂も聞いた。楽しみだね。
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本名・長野眞
フライ・コミュニケーションズ代表
1948年生まれ。1971年上智大学を卒業後、新聞記者、コピーライターの仕事を経験し、シカゴに留学。帰国後「日本国憲法」(小学館)を共同編集したことで本を作る楽しさを知り、北山耕平とともにフライ・コミュニケーションズを設立。斬新でユニークなアイデアと感性で、数多くの作品を企画、編集、執筆する。2009年世界にたった一冊の本をつくる「ニュー・グリーティングブックス」のHPを開設。10年間横浜の小さな森の中で自然とともに暮らし、現在は鎌倉の海辺で閑かな日々を過ごしている。
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