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自由が丘 レノン
2010.11.30 Tuesday
70年代初め、自由が丘に住んでいた。
ある日散歩をしていたら道ばたで「Lennon」という看板を書いている人がいて、気になったので話しかけた。ぼくと同世代の土田くんという青年で、自宅を改造してロック喫茶を作ろうとしていた。よく聞くと彼はジョン・レノンのレコードは一枚しか持っていなくて、一曲だけ大好きな曲があるということだった。
その心意気が気に入ったので、ぼくが持っていたジョンやビートルズのレコード、関連書籍を全部貸してあげてロック喫茶「Lennon」はオープンした。(その代わり、ぼくはほぼ毎日この店を原稿を書く仕事場のように使わせてもらった)
写真は75年の初夏。ベトナム戦争が終わったばかりのころだ。
カメラをさげているのがぼく。ぼくの前に立っている千葉くんはその後カメラマンになった。ぼくの後ろの前田くんは当時慶大生だったが、数年後病気で亡くなった。その横でチェックのシャツを着た吉水くんは今庭師になっていて、時々この森にやってきて庭仕事のアドバイスをくれる。その前の女性はレノンのウェートレスだった人で消息は知らない。ぼくの横の小さな女の子は当時14才の中学生だっためぐみちゃん。現在はお母さんで、先頃娘さんが結婚した。
この写真のひと月後にぼくは仕事をやめてアメリカに渡った。一年くらい前から準備をしていた。あるインタビューでジョン・レノンが「ぼくはニューヨークに、グリニッジヴィレッジに生まれるべきだった」と語っていたのを読んで、どうしてもヴィレッジに行かなきゃと思っていたのだ。
その年の秋、入学した大学のカフェテリアで新聞を読んでいた。
ジョン・レノンにグリーンカード(永住権)がおりたという記事が載っていた。国外退去命令が出ていたジョンとアメリカ合衆国との間の長い闘いが終わったニュースだった。
ジョンとヨーコに男の子が生まれたことも書かれていた。
それから約5年間「ジョンのハウスハズバンド時代」が始まるなんて、そのときは考えもしなかった。ジョン・レノンの歴史の空白期間となるその5年間を埋めるような本を、のちにぼくが何冊も作るようになるなんてことも、そのときは想像もしなかった。
アートワークス#58 ジョン・レノン
2010.11.27 Saturday
もうお気づきだと思うけど、10月9日ジョン・レノンの70回目の誕生日に Happy Birthday, John. という日記を書いて以来、この「森の日記」はジョン・レノンのことしか書いていない。
このまま12月8日の30回目の命日まで続けていきたい。
今日ご紹介するのは、ぼくが発行人だったアートワークスの第58号「ジョン・レノン特集」(1990年9月)に入っていた作品の一部だ。
オリジナルアートマガジン、ART WORKSは150部限定だったし、今は入手できないのでご覧になった方はほとんどいないと思う。(このページのサイドバーのカテゴリー欄にある"ART WORKS"をお読みください)
ジョン・レノン号には23人の作家が参加してくれたが、そのうちの6作品。
オノ・ヨーコ/如雲玲音 上田ミユキ/Happy Xmas 山口マオ/Instant Karma!
広田正/No Reply 上野宏介/身体の傷と心の傷は 佐野元春/To Yoko
アップルはなぜアップルなのか?
2010.11.17 Wednesday
昨日からアップルのウェブページに謎めいたメッセージが書かれていて、ネット上をざわめかせていたが、10時間ほど前に発表された。iTunesでビートルズの楽曲を取り扱うことになった、という告知だった。
アップル(コンピュータ)社とアップル(レコード)社の間ではその社名をめぐって長い間さまざまなことが起きていた。成り行きを心配して見ていたのだけど、今回このようなかたちで両者が結びついたことは、単純に喜びたい。
若いころからアップルレコードの数々をおびただしい回数聴いてきたし、アップルコンピュータも APPLE II の時代から親しんできたからね。
ジョブスとウォズニアックが小さな個人用コンピュータを作って売り出すとき社名をアップルにしたのはビートルズの会社のようにしたかったから、というのはよく知られている話だ。
一方アップルレコードの社名は、ビートルズがロンドンに作ったアップルブティックが発展したものだから、というのもよく知られている。
じゃあビートルズがなぜあのブティックをアップルと名づけたのか、については定説がない。
ここから先はぼくの推測だ。
ジョンとヨーコがインディカ画廊で出会ったとき、一個のかじりかけのリンゴが置かれていて高額な値段がついていたことに、ジョンはショックを受けている。
そして話をしたヨーコはビートルズについて何も知らず「彼女が知っていたのはバンドにリンゴという名前のメンバーがいるということだけだった。リンゴは日本語でアップルを意味していたからだ」ともジョンは回想していた。
アップルブティックが作られたのはふたりの出会いの翌年のことだ。
このふたつのできごとは、無縁とは思えない。
今や世界一の企業になったアップル(コンピュータ)の社名の由来の由来がもしかしたら「アップル・イコール・リンゴ」という日本語にあるのかも知れないというのは、日本語圏で生きるぼくにとってはたまらない推測だ。
インディカ画廊のリンゴは消えてなくなったので、ヨーコは1990年に「かじりかけのリンゴ」をブロンズの作品にして残しておくことにした。
写真は9個作られたリンゴのうちのひとつで、ぼくの手許に永久保存されている。
『ai ジョン・レノンが見た日本』 2
2010.11.13 Saturday
『ジョン・レノンが見た日本』(ちくま文庫)にはジョンの絵だけでなく、彼が日本で撮った7,8点の写真が収められている。
そんな写真があることを聞いて、ダコタ・ハウスで(ほんものの)ファミリーアルバムを見せてもらった。西丸文也さんが撮った写真などに混じって、ジョンが撮った写真もたくさん貼られていた。
新幹線。銀座風景。東京タワー。読売ジャイアンツのユニフォームを着たショーン。
本で使わせてもらうことにして、ぼくはアルバムから写真をはがし始めたが、すぐに胸が苦しくなった。ジョンが撮った写真、ジョンが貼った写真を、ぼくはアルバムからはがして、日本に持って帰り、本を作ろうとしていた。
こんなことをするのに価するような仕事をほんとうにしているのだろうか?
その時ヨーコさんは同じテーブルでこの本のための解説文を書いてくれていた。
「苦しくなったので、外で深呼吸してきます」
と言って立ち上がったぼくにヨーコさんが言った言葉は、一言一句おぼえている。
「私は、毎日毎日、そういう思いをしているのよ」
『ai ジョン・レノンが見た日本』 1
2010.11.10 Wednesday
日本人っていったい誰のことを指すのだろう、という疑問を若いころからもっている。
今もってよくわからない。よくわからないから、たくさんの人に尋ねてきた。
いろんな面白い意見や考えが聞けた。ぼく自身はさんざん悩んだすえ、近頃は、
「おもに日本語で暮らしている人たちのこと」
と思うようになった。確信はまったくない。
ジョン・レノンが日本語を勉強していたこと、それも相当熱心に勉強していたことを知ったのは、80年代の終わりだった。ジョン自身が絵を描き、アルファベットで日本語を書き込んだ2冊のスケッチブックがあることがわかったのだ。
「飛んでみるべきです」
「飛ぶべきではありません。歩くべきです」
というページでは「べき」の使い方をおぼえようとしていたのだろう。
三日月の下でふたりが話している絵があり、
「ここからうちは近いです。ここから月は遠いです」
と書かれ「近い、遠い」を自習していたことがわかる。
200枚以上の絵はどれもすごく面白かった。
ヨーコさんに「これでジョンとともに学ぶ日本語教科書のような本を作って、海外で出版させてくれませんか」とお願いをした。80数点の絵を選び、構成したプランも見てもらった。
textbookという単語を使うのは英語圏では問題になるかも知れないから、とヨーコさんは "Japan through John Lennon's Eyes" というタイトルを考えてくれた。
どこかにかんたんな日本語がほしかったので "ai" をサブタイトル的に入れた。Loveの日本語だね。
日本語版は『ai ジョン・レノンが見た日本』としてちくま文庫に入っている。
「日本人とは、おもに日本語で暮らしている人たちのこと」
というぼくの考えを認めてもらえるなら、ジョン・レノンは日本人になりたがっていたのかも知れない。
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本名・長野眞
フライ・コミュニケーションズ代表
1948年生まれ。1971年上智大学を卒業後、新聞記者、コピーライターの仕事を経験し、シカゴに留学。帰国後「日本国憲法」(小学館)を共同編集したことで本を作る楽しさを知り、北山耕平とともにフライ・コミュニケーションズを設立。斬新でユニークなアイデアと感性で、数多くの作品を企画、編集、執筆する。2009年世界にたった一冊の本をつくる「ニュー・グリーティングブックス」のHPを開設。10年間横浜の小さな森の中で自然とともに暮らし、現在は鎌倉の海辺で閑かな日々を過ごしている。
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