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あなたは美しい
2012.08.17 Friday
New Greeting Books には一年以上新しいラインナップが加わりませんでしたが、ようやく新顔が参加しました。『あなたは美しい』です。
地球上でもっとも美しい生き物と呼ばれることもある、イルカの写真で構成されています。(クジラ・イルカ類へのぼくの思いはサイドバーの<Whales>という項目をお読みください)
New Greeting Books のサイトは携帯電話でアクセスできなかったり、FLASHが見れない人にはサンプルが読めなかったりしましたが、つい最近Facebookの中にFLY Communicationsのサイトが作られ、さっそくそこで『あなたは美しい』をスライドで読めるようになっています。
楽しんでください。
新しいラインナップをどの本にするのか、選択は実はぼくがやったのではないのですが、今この時期に『あなたは美しい』がオンデマンド化されて出てきたことについては感慨無量です。そのことについては、次にまた書きます。
リプル(さざ波)
2012.08.08 Wednesday
あなたが菩薩になるのなら
ぼくはタクシーの運転手になって
あなたを家に連れて帰ってあげよう
----- ゲイリー・スナイダー (訳/南風椎)
「家に連れて帰る」。これはグレイトフル・デッドの主要なテーマだ。
歌詞に多用されているだけじゃない。
どんなに長くて遠いジャムの航海に出ても、最後はかならず港に連れて帰ってきてくれる。デッドの音楽の最大の魅力だとぼくは思っている。
「もし道がわかれば/あなたを家に連れて帰ろう」と歌われているのが『リプル(さざ波)』だ。この歌は俳句のリズムで作られている。英語のHAIKUは575、17シラブルで作られる。
Ripple in still water
when there is no pebble tossed
nor wind to blow
静かな水面にさざ波がたつ
小石が投げられたわけでもなく
風が吹いたわけでもない
----- ロバート・ハンター (訳/南風椎)
書かれていることだけ。裏にも表にもそれ以上の意味はたたえていない。きわめて禅的な俳句だ。日本の伝統的な芸術とデッドが結びついた、素晴しい歌だ。(日本人の耳には七五調の演歌のように聴こえることもあるようだ)ぼくはこの歌を聴くと、龍安寺の石庭で足元に広がってくるさざ波に心を奪われた体験を思い出す。
Photo by Ichigo Sugawara from the book
"Yoko Ono Grapefruit Juice"
『リプル』はとても愛されている歌だけど、コンサートで演奏されるのは稀だった。
2500回以上のライブをやったデッドがわずか40回ほどしか演奏せず、そのほとんどは80年のアコースティック・ツアーで歌われている。
そのツアーの最終日のライブ(『Dead Ahead』)が今回のBOXセットに入っている。
地元のサンフランシスコではなく、ニューヨークのど真ん中のラジオシティホールでこの歌が熱狂的に迎えられたからだろうか、ジェリーは歌の最後に涙ぐんでいる。
Happy Birthday, Jerry.
2012.08.01 Wednesday
今日8月1日の夜はあなたの生誕70年を祝して、全米何百館もの映画館であなたが作った傑作"Grateful Dead Movie"が上映されるそうです。ここ日本ではデッドDVD(14枚組!)のボックスセットが発売になります。ライナーノートその他の翻訳を手伝ったので、この祝祭にほんの少しだけ参加できたようでうれしいです。
1993年にあなたにお会いできた日のことは『スケルトン・キー グレイトフル・デッド辞典』の「訳者あとがき」に書いたことがあります。
今回の旅を仲介してくれたJ.ガルシア・ギャラリーの人から連絡が入り、ジェリーの家にぼくたちを案内してくれることになった。
マリン郡の山の中を車はくねくねと走って行った。道の両側に現れる大きな門構えの中を覗くと、どこもうっそうとした木々に隠れて家なんてどこにも見えない。超高級住宅地帯だった。そんな道ぞいに一軒だけ門も塀もないすごく小さな平屋の家があって、そこがジェリーの家だった。玄関から出てきたジェリーは、こう言った。
「家の中は取っ散らかってるから、空の下で話そうよ」
ぼくたちが発行していたオリジナルアート・マガジン『ART WORKS』をおみやげ代わりに渡し、それを見ながら画家ジェリーの感想を聞いたりした。最近は絵を描くことに夢中になっているという話もしてくれた。やがて家の前にジェリーを迎えにきたリムジンがとまった。その日はオークランド連続公演の最後の日だった。
最後にどうしてもジェリーに話しておきたいことがあった。
「95年に日本でデッドショーをやってほしいんです」
「95年が特別な年だってことは知ってるよ」と、ジェリーはにっこり笑った。
あ、勘違いされてしまった、とぼくは思った。ヒロシマ、ナガサキから50年、日本が戦争をやめてから50年になる1995年に「原爆の解毒剤としてのデッド」(ジョゼフ・キャンベル)に来日してほしいという意味でぼくたちは言ったのだけど、ジェリーは別の意味にとったようだった。1995年という年はグレイトフル・デッドが結成30周年を迎える年でもあったからだ。
「じゃあ、ぼくはシャワーを浴びて、オークランド・コロシアムに行かなきゃ」
と言ってジェリーは家の中に入っていった。ほんの3,40分のことだったが、ほんとうに素敵な時間だった。その日は一日中、ぼくの顔から微笑みが消えなかった。ぼくたちも車でオークランドに向かい、その夜、ぼくはデッドヘッドになった。
あの日から1年8か月後、あなたが「特別な年だと知っている」と言っていた1995年の8月にあなたは亡くなりました。あの日一緒に撮った一枚の写真をたいせつに持って、ぼくはまだ生きています。(大人になってから撮った写真で、ぼくがこんなに素直ないい笑顔を見せている写真はほかに一枚もありません)
ぼくが昔書いた『ワンダフル・バースデイ』という本の一部を今日、あなたの誕生日のためにTwitterに載せてくれた人がいたので、それをそのまま引用します。
あなたに祝福の朝を。あなたに祝福の雲を。あなたに祝福の風を。
あなたに祝福の花を。あなたに祝福の抱擁を。
あなたに祝福の贈りものを。あなたに祝福の音楽を。
ハッピー・バースデイ。
あなたにたくさんの不思議に満ちた一日を。
すばらしい誕生日を。
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本名・長野眞
フライ・コミュニケーションズ代表
1948年生まれ。1971年上智大学を卒業後、新聞記者、コピーライターの仕事を経験し、シカゴに留学。帰国後「日本国憲法」(小学館)を共同編集したことで本を作る楽しさを知り、北山耕平とともにフライ・コミュニケーションズを設立。斬新でユニークなアイデアと感性で、数多くの作品を企画、編集、執筆する。2009年世界にたった一冊の本をつくる「ニュー・グリーティングブックス」のHPを開設。10年間横浜の小さな森の中で自然とともに暮らし、現在は鎌倉の海辺で閑かな日々を過ごしている。
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